七尾こずえ

七尾こずえ(こずえちゃん)は、五代の大学時代のガールフレンドです。もともと五代がバイトしていた店で一緒にバイトしていたのですが、五代は覚えていませんでした。
第15話「複雑夜・・・」で初登場します。
五代は響子を映画に誘おうとしますが、三鷹と響子がデートする日で、三鷹が響子を連れて行ってしまうのを目撃します。そんなときに、七尾こずえのほうから近づいてきたので、五代は断ることが出来ません。
ところがデート中の三鷹と響子のペアが2人と出会ってしまい、響子が強烈に嫉妬心を燃やすという、ややこしい展開になっていきます。

こずえちゃんとのお付き合いは断れない。怖いくらい引きずり込まれていく…
響子が本命の五代は、響子の嫉妬もあって何度かこずえちゃんと別れようとするのですが、上手くいきません。五代は優柔不断で、やっぱりこずえちゃんが悲しむ顔を見たくはありません。
第67話「落ちていくのも」では、五代はこずえちゃんと別れようと意を決していくのですが、そんな日に限ってこずえちゃんは手編みのセーターを五代にプレゼントします。でもこれは優柔不断な五代でなくても断れないですよね。

(第67話「落ちていくのも」)
こずえちゃんは、天然過ぎて人の話を全然聞かないし、五代が何をいっても自分の好きなように解釈してしまいます。でも、あまりに天然すぎですね。
たぶん、ただ鈍感というよりは現実を見ないで「自分の見たい事を見ようとする」タイプなんじゃないかと思います。こずえちゃん自身で妄想して物語を作り上げてしまって、その中に生きているって感じでしょうか。『めぞん一刻』らしいキャラではありますね。
でも好き嫌いの別れるキャラなんじゃないでしょうか。結局、そのままずるずる付き合い(?)つづけてしまうことになります。
そのうち七尾家に連れて行かれて出入りするようになり、夕飯までご馳走になる始末...

(第30話「混合ダブルス」)
実際のところ、五代とこずえちゃんの相性はばっちりで、見た目的にも相性的にも、ぴったり五代と釣り合うキャラです。なので、放っておくとドンドンこずえちゃんのペースに巻き込まれていきます。でも、ある意味、それで何の問題もないし、学生同士の普通の楽しい恋愛の光景ですよね。
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天然で不思議ちゃん、正直ちょっとイライラするレベル?
こずえちゃんは典型的な不思議ちゃんです。でもデフォルメされすぎたのか、なんだかリアリティがないキャラですね。登場回数は多いのに人物描写は深くないし、実は四谷さんの次に理解しにくいキャラなんじゃないかと思います。
高橋留美子先生も
と発言しています。ご自身で作ったキャラなのに、笑
一応、数は少ないけれど、素のこずえちゃんが垣間見えるところを描いています。だから作者としてはもう少し深い描写をしたかったのかも知れません。ただ他のキャラに比べるとリアルな部分のインパクトが薄くて、読者にも届きにくいかも。
そのせいもあってか、後半になると登場回数が少なくなり、八神いぶきがストーリーを動かしていきます。
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こずえちゃんは、実は気づいていた(!?)
さて、もしかするとこずえちゃんに対して、少しひどいことを書きすぎたかも。
共感できる所も書いておきたいと思います。実は、こずえちゃんは「五代が響子を好きだった」ことに気づいていた気がします。あまり一貫性はないのですけど、デート中の会話でたまに出てきますし。
もちろん、こずえちゃんは、そんなことは信じたくありません。だから「気づいていたけれど、信じないことにした」。そう考えると一気に健気なキャラになりますね。天然さが相当デフォルメされていて見えにくいですけど、ちゃんと描かれているんです。そうすると大分理解できるキャラになりますね。
現実にもそういう人っていますしね。

(第107話「閉じられた扉」)

第107話「閉じられた扉」では、ほんの一瞬ですがリアルな表情を見せています。響子と三鷹が結婚すると信じたから、安心してこんなセリフを言ってしまったのかも。でも、五代が少しそれっぽい反応を見せると、こずえちゃんのほうから話題を変えて、いつもの天然なこずえちゃんに戻ってしまいます。
こずえちゃんも作者がその気になって、もう少し深い性格描写をしていたら、もっとそういうコンプレックスが垣間見えたかも。そうすると例えばラムちゃんみたいにすごく健気で可愛いキャラになったかも知れませんね。
でも、あえてそれはしなかったんだと思います。音無響子って未亡人で性格にも難があるし、そこまで「不動のヒロイン」じゃないので。深く描写することで読者の共感を深めたり、いろんな手を使って魅力的になるように描いています。それでも、八神いぶきなんて、見方によっては響子よりも魅力的かも。こずえちゃんだって、深く描写したら響子と同等の魅力が出たかも知れません。
例えばTV版アニメでは、途中から響子の性格描写を弱めにした結果、あまり深くは共感できない感じです。そうすると相対的にこずえちゃんや八神の魅力が強まってしまっています。こずえちゃんも八神も原作より可愛く描かれているので、ヒロインの響子は原作ほどのダントツの魅力が無いように感じます。
とはいえ、もし、こずえちゃんの描写がもう少し深くて、もしそれで『めぞん一刻』のストーリーが成り立っていたら・・・。もっと深読みできるマンガになったろうなと思います、笑
実は現実派?本当に天然なの?
さて、こずえちゃんは終盤に再登場します。もう就職して、しかも銀行の窓口で、お金を扱う仕事をしているんです。天然キャラなのに、仕事はソツなくこなしている雰囲気です。
そこで高校の時の先輩と再会して、プロポーズされます。かなりぎこちなかった先輩のプロポーズ。でも響子と違ってちゃんと理解してますね、笑

そして先輩と別れてから見せるリアルな表情(!)

こんなシリアスな表情のこずえちゃんって、見たことがないような。
このエピソードの描き方を見ると、今度は「リアルな瞬間」じゃなくて、ちゃんと悩んでいるようです。
あるいは大学を卒業して社会人になって、精神的に成長したんでしょうか。
先輩からプロポーズはすぐに断るわけでもなく、なぜか五代に相談します。そこで五代の保父試験の結果発表を待ってから、先輩へプロポーズの返事をすることにします。それって、響子よりも現実派なんじゃないですかね。
こずえちゃんは、一見、すごく天然そうに見えるのですが、それはあくまで表面に見える仮の性格。実は響子ほど鈍感じゃないし、堅実な先輩の不器用なプロポーズもちゃんと理解して、それからちゃんと悩んで決めています。ある意味、響子に比べると十分敏感だし、普通の女性じゃないですか。
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かわいそう?五代とこずえちゃんの別れ
結局、五代が大学を卒業した後まで4年以上もズルズルとつきあいつづけます。こずえちゃんと五代は、大学時代のほとんどの期間付き合い続けていたのです。しかし五代の本命はずっと響子でした。
最後の最後で五代が別れを切り出して、やっとこずえちゃんにも通じたのですが、その時、既にこずえちゃんは高校の時の先輩のプロポーズをOKしていました。
そして、五代がずっと響子を好きだったことを最後まで知ることはありませんでした。
いや、実はある程度気づいていたから、あえて聞かなかったのかも。相手が朱美だったら、こずえちゃん的にはむしろ良かったかも知れません。でも響子だとわかったら・・・いままでずっとこずえちゃんが感じていて信じたくなかったことが、全部白日の元にさらされてしまいます。
2007年ドラマ版では、五代とこずえちゃんの別れのシーンでこずえちゃんは、五代にグーパンチしています。
でもこれは七尾こずえが現実を見ないで、五代の話を聞かなかったこともあるし、こずえちゃん自身の鈍感さも原因ですけどね。

ウルトラC級のストーリー展開というべきか、『めぞん一刻』の一番長い一日に、最後はすっきり円満にお別れすることになりました。
そうはいっても、修羅場になってもおかしくない七尾こずえとの別れのシーンが、響子と五代の2回のベッドシーンの間にあるのだから、五代にとっては相当きつい状況ですよね。
『めぞん一刻』って本当に凄いストーリーだなと感心します。
