女性も必見、音無響子の魅力を探求

『めぞん一刻』のヒロイン、音無響子はやっぱり魅力的な女性です。ビジュアルは磨き抜かれていて高橋留美子作品の中でもダントツです。しかし、ビジュアルだけなら他のマンガやアニメにも魅力的なヒロインはいるはず。
でも音無響子の魅力は別格なんです。
憧れのマンガキャラに見る「モテる女性像は30年前のまま」仮説」というエキサイトニュースの記事では、2014年時点でトップは音無響子、2位がラムちゃんと、高橋留美子先生のつくったヒロインがワンツーを飾っています。ライバルともいえる、あだち充の朝倉南が4位にランクインしていますね。
他サイトでもランキングを取ると必ず上位に出てくる強力さ。
「普遍的な魅力」ってがあるってことですよね。
30年間、ラブコメのトップに君臨する音無響子の魅力を、とことん追求してみたいと思います。
音無響子の魅力:基本編
理想化されたビジュアル

まず音無響子は「高嶺の花の女性像」であるってことですね。

6年半に及ぶ長期連載のなかで徹底的に磨き抜かれていき、そのビジュアルは完璧といえるレベルに達しています。スタイルも抜群。20代女性の理想像の一つです。
なぜそこまでビジュアルを磨き上げたのかといえば、音無響子は年上でしかも未亡人とハンデがあるからです。五代はさておき、あの三鷹まで一目惚れするのだから、ビジュアルは相当磨き上げておかないとストーリーが成り立ちません。
そうなると作者にとって腕の見せ所。きっとこの設定のインスピレーションを得た時、あえて背水の陣をしいて全力で作画することにしたのではないでしょうか。
でもビジュアルが良いのはラブコメのヒロインだから、ある意味当然。上で紹介したサイトでも「やっぱり男性は巨乳が好きなのでしょうか」なんて書いてあります、笑。
美貌もグラマーなスタイルも魅力ですが、それだけではここまで惹かれないと思いますね。
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ミステリアス
音無響子はエピソードが進むごとにミステリアス(≒意外性)なところがどんどん出てきます。
未亡人であること自体もミステリアスですし、第6話「春のわさび」まで、それが明かされなかったこともミステリアス。他にも初期は意外性が毎回のように出てきて、複雑な響子の性格を作っていきます。

「きまぐれオレンジ☆ロード」という作品はご存知だと思いますけど、ミステリアスって見方では『めぞん一刻』をシンプルにしたような設定なのですが、このマンガは分かりやすいです。可愛いのひかるちゃんより、ミステリアスな鮎川のほうが魅力的ですよね。
ミステリアスな女性って興味深くて、すごく惹かれるところがあります。付き合い始めても飽きないんじゃないかと思います。
もっとも男性から見ればほとんどの女性はミステリアス。ミステリアスさが無いとただの友達になってしまいます。
亡き夫に貞操を捧げようとする
貞操観念(ていそうかんねん)なんて古臭い言葉のような気がします。でも貞操観念があって簡単には落ちない女性ってやっぱり魅力的です。これは今付き合っている彼氏に貞操を誓うのとは別で、簡単には落ちないってところもないとダメなんです。
これって1980年代の性の開放みたいな動きへの反発でもあって、あえて古風なキャラをヒロインにしたんだと思います。
第8話「惣一郎の影」のやり取りでは、急に感情的になって一の瀬さんがびっくりするほど。
一の瀬「死人に操をたてるなんて」
響子「惣一郎さんはまだ死んでません!」

だからって、ぜんぜん落ちないのはダメですけどね。
音無響子は五代や三鷹の告白にこたえず不沈艦のようですが、初期だって五代や三鷹とデートするところまではOK。男性の気をもたせる行動も沢山しています。
最後は再婚するわけだし、初期のころから五代や三鷹のアプローチで心が揺れる場面が描かれています。
思わせぶりな行動
音無響子は自分自身が「五代が好き」だと認識する前から、好きであるかのように振る舞っています。
女性が男性を好きになる時にどんなプロセスをたどるのかよく分かりませんけれど、前半では響子自身が五代を好きか、どうかよく分かっていないようです。あるいは実は心の底では分かっているけれど、自分自身が認めたくない、ということでしょうか。
初期のほうの第47話「キッスのある情景」では、夢の中で思いきり五代にキスしてますが、朝、起きたらこの調子、笑


でも、最初のころから行動には出ていて五代の気を引いています。 大学受験のころから五代に「がんばってくださいね」をやっているし、一刻館の住民たちも誤解するくらい。 それが無ければ、五代にとって響子は憧れの存在から進展せず『めぞん一刻』は始まりません。

「がんばってくださいね」
それから随所に出てくる、まるで夫婦のようなシーン。音無響子は結婚しているわけだから、無意識のうちにそういう行動をしてしまうのかも知れませんけど、これはかなり思わせぶりですよね。

五代が「もしかすると気があるかも」と思わないと、それはただの高嶺の花であって、あまり印象に残りません。ちょうと響子と坂本の関係ですかね。
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仕草が可愛い(フラーティングの達人)
音無響子は、仕草が可愛いです。ひよこエプロンをして竹箒(たけぼうき)で掃く姿、テキパキ家事をする姿も魅力的。掃除って管理人だから当たり前の仕事ですが、それをとても可愛くやっているんです。しかも同時に気品が溢れているという…

それ以外の仕草も、とても可愛く描かれていて、一般的な高嶺の花の女性のイメージと違って、とても親しみやすいんです。


渡し方がいいですね。
嫉妬(しっと)するシーンだってそうです。なんだか子供っぽくて可愛いと思います。しかも響子の場合、本気で嫉妬して本音が出てしまうので、なお可愛いです。

もちろん、嫉妬だけでは「コンプレックスが多い付き合いにくい女性」になり敬遠されそうです。怒りっぽいだけじゃ、嫌われていると考えて終わり。響子がいくら強烈に嫉妬しても平気なのは、もともと普段の行動で五代に気があることが分かるからです。

この一瞬の表情だけで全てを語っているアニメ版の名シーン
(第16話「桃色電話」)
異性を気をふりまく仕草をフラーティングといいますけど、音無響子はフラーティングの達人です。
いくら美女でスタイルがよくたって、スキがなくて全く相手にしてくれないような女性だったら魅力的とは感じないはず。女性がフラーティングしてくるってことは男性として見られているってことなので、もしかすると気があるかもと気になる存在になります。
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ずっとプラトニックな恋愛
『めぞん一刻』は2回のベッドシーンはありますが、それまでの7年位ずっとプラトニックです。20代の男女が恋愛して7年間プラトニックな恋愛って、それはやりすぎなんですけど、じゃあもっと早く深い関係になってしまったら、たぶん7年も連載できなかったと思います。
男性は深い関係になってしまうと、なぜか飽きてしまうもの。その理由は本人にもわからず、たぶん男性の本能レベルの話なので、どうしようもない気がしますね。逆にチャンスがあるかもと思いつつ追いかけていると、いつまでも飽きることはありません。
『めぞん一刻』は深い関係になるのは最後の最後であって、つきあってからのエピソードも数話しかありません。ある意味、音無響子をもってしても、そうなってしまうんですね。

音無響子の性格をもう少し深堀り
音無響子は、矛盾した要素がすごく強いキャラクターです。「音がないのに響く」という名前が表しているとおり、矛盾した所にコンプレックスをもっていて、たまに見せる弱さと本音は読者の深い共感を呼びおこします。高橋留美子先生のキャラの中でも、その要素が飛び抜けて強力なキャラです。
そこを中心にさらに深掘りしてみましょう。
健気(けなげ)、強気だけれど本当は弱い
音無響子は健気で強気なのに弱さがあるキャラクターです。
『めぞん一刻』は長いストーリーですが、音無響子の魅力を集約しているエピソードもあります。筆者のオススメは、第36話「ショッキング・ジョッキ」。一刻館の面々にたかられた五代を響子は助けようとしますが、響子も酔っ払ってしまって、おごってあげるどころか五代に背負われて帰ってくるという…。このエピソードの響子は、ホントに健気で可愛いですね。

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可哀想、助けてあげたくなってくる
後半、音無響子は自分自身をトコトン追いつめて行きます。そんな響子にすごく共感して可愛そうだとか、かえって可愛いと思ってしまいます。このパワーは半端じゃないです。音無響子はすごく可愛そうで、そこが可愛くもあるし、守ってあげなきゃと思ってしまいます。

実際のところは響子は五代、三鷹、亡き惣一郎の3人共好きなんです。要は普通の女性なんですが、その矛盾した感情を認めるわけには行かないんです。そして真面目に対峙して深みにはまっています。行動には現れるのですが、言いたくても絶対に口に出すことは出来ません。

ニッチモサッチもいかない
亡き惣一郎はもう死んでしまっているわけだから解決方法はないんです。何があってもそこで行き止まり。このどうにもならないコンプレックスってすごく共感を誘いますし、その感情の衝突によるテンションって凄いです。そのことについて響子の高校時代の担任の先生が代弁しています。

のちの『犬夜叉』なんてその最たる物語です。頂点にいる巫女の桔梗(ききょう)は、既に死んでいて妖術によって再生した仮の肉体しかありません。犬夜叉がいくら桔梗のことを思っても、既に仮の体しかありません。ラスボスの蟲毒(こどく)ですら、大けがで寝ているしかない鬼蜘蛛(おにぐも)が桔梗の肉体を欲したから誕生したんです。
一番の悪役の鬼蜘蛛だって、そこに感情移入したら相当苦しいはず。瀕死の病人だからって欲がなくなるわけじゃないですから。ニッチモサッチもいかない骨組みが埋まっている点では『めぞん一刻』より根深いかも。
でも、もし響子が「五代が好きだから」と簡単に音無家から籍を抜いて五代と付き合い始めたら、音無響子はこんなに魅力的にはならないんです。
永遠に解決しない葛藤(かっとう)の中で、どうしても他の男が好きになったと認められず、もがいているところが音無響子の可哀想なところで、表面的な悪い所を全部打ち消すくらいの強力な共感を誘うし、魅力にもなっています。
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音無響子はルーミックワールド最強の悲劇のヒロイン
惣一郎の死は、ニュースになってもおかしくない位、ショッキングな出来事だったのに、普段は一刻館で明るく過ごしていて辛いところは表には出しません。普段から悩んでばかりで悲嘆にくれている女性だと、可愛そうだなと思うけれど魅力は感じないのではないでしょうか。
音無響子は悲劇の中にあっても明るく前向きです。そんなところが響子の魅力を昇華(しょうか)させているんですね。

(響子の思い出)
その悲劇をさらに強化しているのが周囲の無理解。 周りの人は「早く再婚したほうがいい」としかいいません。 優しそうな音無のじいさんですら、惣一郎が亡くなった直後なのに、なぐさめるわけでも同情してあげるわけでもないんですよね。 さらっと描いていますけど響子にとって、とても厳しい世界です。

この悲劇は、亡き惣一郎と響子の二人だけのものといった風情。でも惣一郎は黄泉(よみ)の国にいるわけだから、現実として響子は一人で立ち向かわないといけません。
ヒロインの悲劇性は、高橋留美子先生の初期の作品に通底しています。
何も考えてなさそうなラムちゃんだって、諸星あたるなんて変な男を好きになった事がすでに悲劇。いくら電撃したって晴らせない運命を背負っているとも言えますもんね。以下の有名なエピソードのこのセリフでラムちゃんファンになった人も多いと思います。
長大な痴話(ちわ)げんかだけで出来ている最終話では、ラムちゃんはこれまでにないくらい強烈な怒り方をしますが、常に悲哀とか虚しさがセットになっています。なので、ラムは怒れば怒るほど、魅力的になっていくという…。これをカラッと描いてしまうのが凄いですけど。


表面的にはラブ・コメディのヒロインらしい明るくグラマーな美女たちなのですが、ときおり描写が深くなって、少し深いところにある悲劇性が表にでるので、とっても心を揺さぶられるんですね。
美術や芸術などで「美しいとは何か」という議論がありますけど、こういう感情的な要素はビジュアルよりも強力に「美しさ」を体現しているようです。
音無響子は高橋留美子作品の中でもダントツの悲劇のヒロイン。なので、強力な魅力があるんです。
音無響子の悪い所:ズルい女、魔性の女、挙句の果てはビッチとまで…
確かに音無響子には悪い所も沢山ありますね。
五代から告白され、三鷹からプロポーズされているのに、響子は何年も返事を引きのばしています。初め響子は惣一郎に操を立てていて、それで理解できるのですが、中盤以降は響子自身も五代が好きだという認識を持ち始めます。それでも響子は五代にこたえようとしません。
深読みすると、そこにはかなりリアルな亡き惣一郎の影が…

どうしてもラファエロを連想してしまいます。
音無響子の悲劇は作中に何回か出てきます。ならば亡き惣一郎だって悲劇の主人公のはず。
- いくら未練があっても引き裂かれる運命しかない惣一郎と響子のラブストーリー
- 誰でも最後はくっつくと予想できる五代と響子のラブストーリー
「深読み!めぞん一刻」では、惣一郎は成仏していないと解釈しているので、黄泉の国にいる惣一郎と現世を生きる響子のラブストーリーは現在進行形です。すなわち『めぞん一刻』では最初から最後まで「悲劇」と「喜劇」がシンメトリックに同時進行してるんですね。ホントにすごいアイデアですね。
また『めぞん一刻』の宿命として、惣一郎を乗り越えなければ音無響子と付き合うことはできないんです。もうこれはキャラの性格というより『めぞん一刻』のストーリー展開の凄みです。
深読み全開ですけど、物語終盤について書いてみたいと思います。
音無響子と三鷹に割って入る惣一郎
惣一郎は三鷹に対しては犬を使って響子から遠ざけようとします。
一番すごいのは、三鷹がプロポーズの返事を響子に迫るシーン。響子は返事をする日、YESの返事をしようとしていたんです。しかもソープをはしごして朝帰りした五代への当て付けで。五代は響子がプロポーズの返事を迫られているなんて知る由もありません。


三鷹だってOKといわれても、そんな理由じゃ何年も待った甲斐がないですよね。
響子はプロポーズの返事をしに行きますが、徹夜で悩んでいたので席で寝てしまいます。三鷹は九条明日菜の犬に気づかれて、抱きつかれ(襲いかかられ?)失神して、待ち合わせ場所にたどり着けませんでした。つまり暴走した響子を守ったのは亡き惣一郎でした。


そして三鷹は犬の妊娠の話を、九条明日菜を妊娠させてしまったと勘違いして、九条明日菜と結婚することを決めてしまいます。恋のライバルの脱落のしかたとしては、ありえない展開ですね。響子は三鷹をふることは結局しませんでした。ぬるま湯のまんま三角関係が解消したんです。

それにしても壮絶(そうぜつ)なストーリー展開ですよね。何年も待ち続けて、結局、返事すらもらえなかった三鷹。ある意味、何年も待った後で門前払いですよ。
この顛末(てんまつ)を深読みすれば、亡き惣一郎が三鷹を嫌って犬を使って遠ざけたのだ、という所でしょうか。策略を使って、響子から強引に返事を引き出そうとしたので、さらに嫌われたんでしょうね。
やっぱり可哀想?でもよく考えると九条明日菜って、音無響子よりも結婚相手としては良さそうですけどね。

結局のところ一刻館の三号室は空いていて、つまり三鷹が入り込む余地は十分用意されていたのに、三鷹は響子にも惣一郎にも深入りせず、ただ響子の気持ちの整理がつくことを待っていただけでした。結局、三号室のカギは一度も開くことはありませんでした。
五代のばあちゃんが第58話「カモナ マイハウス」で
と言っていたように、三鷹が響子の心の中に入り込めていたら、響子は迷わず三鷹を選んだでしょうね。男性としていくら条件が良くても、肝心なところが努力不足だったんです。

終盤の三鷹の話は、亡き惣一郎が大きくからんでいるので、響子を「ズルい女」扱いにするのはちょっと違うのかも知れません。

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音無響子と五代に割って入る惣一郎
三鷹が脱落したのに、なかなかくっつかない五代と響子。やっぱりそこにもリアルさを増す惣一郎の影が…
『めぞん一刻』の初期のエピソードから、五代は、響子を押し倒そうとしたり、寝ている所を襲おうとします。でも響子が「惣一郎さん」といった瞬間、五代が躊躇(ちゅうちょ)して事なきを得るということが何度もありました。

つまり亡き惣一郎は、ずっと五代から響子を守っていたってことですね。2人が結ばれるシーンはそのピークでもあります。
終盤、響子が家出するエピソードで、さすがの響子も精神的に限界を迎えてしまいました。一方の五代は、就職もできず、落ちていって人生の試練の真っ只中。とても余力があるようには見えません。それでも五代は響子を受け入れようとします。
ここで響子は、惣一郎のことも含めて7年分の超弩級に重い荷物を背負ったまま、五代に体を預ける決心をしてしまいます。 まず普通に、言葉で返事をすればいいんじゃないか、と思いますけど…?、でもまあ正攻法だと優柔不断な五代がリードしてくれるとは限らないし、もう響子は緊急事態に陥ってますね…
それにやっぱり響子は五代に対する気持ちは言葉にできないのかも知れません。いざとなると亡き惣一郎の存在は大きくなってきて、響子は惣一郎を裏切れませんから。キス未遂の時も、キスシーンの時も、響子は言葉にすることを避けています。書いてあるとおり、先に体の関係になって重荷を下ろせば気持ちも変わると考えたのかも。

問題のラブホテルでのベッドシーンになるわけですが、五代からすれば、いきなりホテルに入ることになった訳だし、あんなヘビーなベッドシーンじゃさすがに無理ですよね。しかも響子は惣一郎(犬)の名前を言ってしまい、ギリギリだったけれど惣一郎(旦那)の最後の抵抗でしょうか?
しかし、その日のうちに一刻館の管理人室でまた二人きりになります。そこでも響子は惣一郎との幸せな日々の思い出話をします。響子にとっては過去の思い出ですけど、まだ五代にはそのことは分かりません。そして、その流れでまたベッドシーンになるという…

この時点で五代を好きだとは言ったことがないんです。
うーん、音無響子ってなんてヘビーな女性なんでしょうね。本人はわかってないかも知れないけど、容赦なくプレッシャーをかけ続ける響子。そして、
亡き旦那とはいえ他の男を世界一好きだと言い切った後で、すぐに自分を抱けと言ってくる女性ってすごいと思いません?
このベッドシーンは五代にとって失敗が許されない最大の試練です(ベッドシーンは試練なのか...現実にもそういう要素があるかも知れないけど)。
そんな悪い所全開の響子を受け入れることで初めて二人は結ばれます。そして重荷が降りた響子は五代に対して「ずっと前から好きだった」と初めて素直に答えます。

一刻館で結ばれたということは、惣一郎も認めたということですかね?でも、惣一郎(犬)がまたスナック茶々丸にいて一刻館にいない、ということが強調されているので、亡き惣一郎がいない合間に結ばれたということでしょうか。
亡き惣一郎は分かっていてわざと一刻館にいなかったのかも。だって肉体を持たない亡き惣一郎は、今の響子の苦境を救ってやることは出来ないんですから…。響子と同じく亡き惣一郎のほうも、もう行き詰まってしまったのかも知れませんね。
それから後の響子は、素直な女性に大変身します。

結婚式の一週間前に響子は惣一郎とのアルバムを見つけます。はじめて五代は亡き惣一郎の顔を見ることができました。
しかし響子は惣一郎の遺品を見つつ涙を流します。結婚式の一週間前になっても響子は完全に亡き惣一郎を忘れたわけではなかったのです。 それを見てしまった五代は惣一郎の墓に行き、有名な名ゼリフ「あなたもひっくるめて、響子さんをもらいます」と語りかけます。
それを偶然見ていた響子は完全に心の整理がついたようです。そしてこのシーンで惣一郎も成仏したんじゃないかな。このページが最後で、次は最終話「P.S.一刻館」。このシーンで『めぞん一刻』のメインのストーリーは終わったんですね。


何が書きたかったのかというと、終盤のエピソードはちゃんと読み込まないと誤解されやすいってことですね。表面的にやっていることを見ると、ズルい女、魔性の女、挙句はビッチとまで言われてますけど、全巻通しでちゃんと読めば響子の重荷とか行き詰まった辛さはよく理解できます。読んでいるほうも、たまにしんどくなるくらい。
『めぞん一刻』は高橋留美子作品で一番リアルなファンタジーなので、響子の夢の中ですら惣一郎が言葉を発するシーンはほとんど出てきません。過去の惣一郎との思い出ばかり。でも、惣一郎と響子のラブストーリーがずっと続いているというヒントはそれなりにある気がします。そこを見ないで音無響子について色々いっても仕方ないような気がしますね。
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まとめ:音無響子をここまで魅力的にしたのは?
結論としては、音無響子は性格が良い女性、とまでは思いませんけど、原作を読めば心の中がていねいに書いてあるので理解出来ます。

性格の悪い女性というよりは、重荷を背負った普通の女性だったのだと思います。コンプレックスのある性格もじっくり読んでいくと、普通の女性がもっていそうな要素ばかり。音無響子が置かれていた厳しいシチュエーションがそれを強力に引き出していたんですね。
終盤、五代の結ばれた後の変わり様は注目です。高校生の時の千草響子を見ても、本当はストレートで素直な性格。そんな性格が戻りつつある雰囲気です。
でも、もとの素直な性格に戻るにつれて、音無響子の魔力ともいえる強力な魅力が、少しずつ薄れていくような感じがするのは気のせいでしょうか。
やっぱり音無響子のミステリアスな魅力を引き出していたのは、亡き惣一郎だったんでしょう。自分の死によって、はからずも女性として魅力的になっていく妻の響子。自分に操を立てるほど「処女よりも純潔」と言われるくらい清純で魅力的になっていくんです。この理不尽な世界観がまさに『めぞん一刻』なんです。

これって、五代の「初めてあった時から響子さんの中にあなたがいて・・・そんな響子さんをおれは好きになった」という名セリフにも表現されていますね。五代が自覚しているかどうかは別として。
こうやってストーリーでヒロインを極限まで魅力的にしてしまう高橋留美子先生には脱帽するしかありません。でも、その仕組みが崩れることによって、元の女性に戻っていくわけですね。
音無家から籍を抜いて、五代と結婚した後の響子はどんな性格になったのでしょう。少しだけ描かれていますけど短いですからね。『めぞん一刻』ファンとしては、そこはもうちょっと見てみたかったところです。